北京の温泉の訪ねて ~小涌谷商務会館~

北京郊外には実にたくさんの温泉がある。昔から療養に利用されてきたのか、それとも昨今の温泉ブームに乗って急速に開発が進められたのかは定かではないが、どこも週末には大勢の人出で賑わっているらしい。
今回、そんな北京郊外の温泉の一つを体験する機会が与えられた。昌平区の小湯山という温泉地にある「小涌谷商務会館」だ。
「小涌谷」といえばどこかで聞いたことのある名前だが、それはさておきこの温泉、北京在住の日本人の間ではすでに有名で、かなりの確率でここへ行ったことのある人に遭遇する。評判はさまざまだが、おおむね悪くはなさそう。しかも今回は大晦日から元旦にかけての1泊ということで、年越しスペシャルパッケージが用意されていた。
内容は、食事をしながらの紅白歌合戦観賞、爆竹、万里の長城での初日の出、お雑煮と、まさに日本人をターゲットにしたもの。
というのもここのオーナーは、実は日本になじみが深い大の日本びいき。「小涌谷」という名前もそんなことから付けられたようなのだ。
待ち合わせ場所の21世紀飯店で午後3時、他のお客さんたちと合流して迎えのバスに乗り込む。今回の一行は全部日本人で15人ほど。なかにはペットの犬を連れた人もいる。この施設ではたくさんの番犬を飼っており、オーナー自身も犬好きと見えてペット持ち込みはオーケーなのだ。
バスはのどかな農村を進むこと約1時間半で目的地に到着。大きな道路から温泉へ入る小道はうっかりしていると見逃してしまいそう。小湯山は温泉地ではあるものの、ここはきっと他の施設からは遠いところにあるのだろう、付近には全く看板が出ていないため本当に温泉があるのかとちょっと心配になってくる。しかしくねくねと山を分け入ったところに確かに一見宿が見えてきた。

空気が澄んでいるせいか、青い空に山がよく映える |

鉄橋には長い長い石炭を積んだ貨物列車が走る |

次第に景色は荒涼としてくる |

途中で山羊の群れに遭遇 |
周りにははっきり言って何もない。季節が季節だけに木々も枯れ、荒涼とした山々と畑と凍りついた湖があるだけ。獰猛そうな巨大な番犬の出迎えに一瞬ひるんでしまうが、こんな何もないところでは彼らの存在がかえって心強い。

入り口付近には強そうな番犬が3頭 |

周りには栗の畑ばかり |
宿は大ホール、温泉棟、和室棟、洋室棟、四合院、管理棟、というようにそれぞれ独立した建物が集まって一つの宿を形成している。というのも、ここはもともとはオーナー夫婦が自分たちで余暇を楽しむために作った別荘。友人たちを招くうちに評判になり、その後約2年半前に旅館経営に転向して増築と改築をしながら今の形になったものなのだ。

右手が温泉棟、左手が管理棟 |

門の外に洋室棟がある |
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和室はなかなかいい雰囲気 |
今回我々が泊まったのは和室。写真のように見事に和の風情が再現されている。細かいところをつつけばきりはないのだが、資材の調達も大変なこんな山奥でこれだけのものを作ったということと、少しでも日本人客にくつろいでもらいたい、外国人客に日本式の温泉宿を体験してもらいたいというオーナーの心遣いが感じられて非常に好感がもてる。
他のお客さんに聞くと、別のタイプの部屋もそれぞれに清潔感があって行き届いているという。
少し離れたところにある四合院タイプも見せてもらったが、昔ながらの四合院を改造して使いやすくしてあり、周囲には普通の農民たちの生活の息遣いを感じることができる。こんな環境に宿泊できるのは北京広しといえどもめったにあるものではない。夏は欧米人が自炊をしながら長期滞在していくというが、その気持ちも分かる気がする。

四合院タイプ |

四合院ではわいわい合宿のように楽しめる |
温泉は基本的には巨大な共同浴場が一つ。スイートルームにはプライベート温泉があるらしい。この巨大温泉は、水着を着ながらみんなで一緒に入るもよし、客どうしで話し合って男女別に入るも、家族別に入るもよし。どちらにしろたとえ満室であっても人数はたかがしれているのでゆったりとくつろげる。なによりも、過去に行った中国の温泉テーマパークのような雑然さがなく、温泉に浸かることに専念できるのがありがたい。

趣のある大浴場 |

温泉棟のロビー |
肝心な泉質は硫黄泉で、浴場内には「これぞ温泉」と思わせる硫黄の香りが充満している。これも過去のテーマパークでは感じられなかったことだ。話によると、温泉は地下2000メートルからくみ上げられており、源泉の温度は30度ちょっと。沸かし湯ではあるのだが、100%の温泉なので硫黄泉の特徴である温まりやすさは微塵も損なわれていない。また、洗面所などの蛇口からも惜しげなく硫黄の香り漂う温泉が出てきたのには感動した。
食事は木のぬくもりを感じさせる山小屋風の大ホールで。頼めば部屋食もできるのかも知れないが、今回は目玉の一つ紅白歌合戦の観賞があったので、唯一日本の衛星放送が見られるホールで全員でひとつの食卓を囲むことになった。とはいっても料理は家族ごとのお皿で出してくれるので気兼ねなく食べられた。
特筆すべきはここの料理の美味しさ。場所が場所だけにそんなに食事には期待していなかったのだが、どれも丁寧に作られており粗雑な感じは一切なし。後で知ったところによるとここのシェフは北京市内の5つ星ホテル兆龍飯店から招聘したのだとか。納得、である。
また、今回のスペシャルパッケージ専用のサービスなのか、普段からそうなのかは分からないが、ビールをはじめとする飲み物が全てフリーだったこともうれしい。

大ホール |

朝食 |

お雑煮は関東風の澄まし汁 |

ここの隠れた名物は刀削面 |
さて、翌朝はもう一つの目玉である万里の長城の初日の出ツアーに出かけることに。宿からは車で50分くらいで慕田峪長城に到着する。この日の出ツアーは普段でもオプションで行っているようだ。
当日は朝5時30分に集合しバスで向かう予定だったのだが、なんとその時間になってバスのエンジンがかからないというトラブルが発生。宿の人が大慌てで別の車を手配してくれるもロスタイムは1時間以上。それから急いで飛ばしたものの、残念ながらご来光の瞬間には間に合わず。本当にタッチの差だっだのだが・・。でも何とか、まだ上ったばかりの輝く日の出をカメラに収めることができました。今年もいいことありますように。

慕田峪長城では龍の舞いで初日の出を祝います |

非常にきれいな初日の出でした |
今回の温泉宿はでは想像以上に気持ちのいいステイが体験できた。設備は大規模なところにかなわない面もあるが、それを感じさせないこの気持ちのよさはなんなのだろう。
温泉自体のよさや料理の満足度ももちろんのこと、その大きな秘密は従業員の対応のよさにあると思う。話によればほとんどが地元の人らしいが、みんな顔にしわがよるほどニコニコと愛想がよく、こちらの要求にはすぐにこたえてくれた。都会の画一的なサービスに慣らされた私たちにとっては非常に心にしみるものであった。
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天然のスケート場で童心に返って遊びました。夏は泳げるそうです。 |
特に今回は日本人の年越しにあわせた内容だったのだが、これが客寄せの手段といわれてしまえばそれまでだが、中国にきたら中国式に年越しをしろといわれてもおかしくない状況の中、美味しい雑煮を作ってくれたり、何とか初日の出に間に合わせようと骨を追ってくれたりと、日本人がいかに心地よくお正月を過ごせるかを追求してくれたように思う。これは海外で生活する我々にとってはとても心温まるおもてなしだった。
聞くところによれば、春にはさくらんぼ狩り、夏は避暑、秋には栗と胡桃がたわわに実り、それぞれに違った楽しみ方ができるという。また機会を見て是非訪れてみたいと思う。

ペット兼番犬 |

夏はテラスでひと涼みもよさそう |
DATA
小涌谷商務会館
北京市昌平区興寿鎮海子村【地図】
電話:8972-5840(中国語)
13718082252(日本語)
料金:スイートルーム700元/一人
和室・スタンダードルーム・四合院400元/一人
(料金には全て朝食、ディナー込み)
その他:水着持参、ペット可、市内までの送迎あり
(2008年1月記)
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