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 中国のビニール袋制限令とその背景

エコバックの普及が本格化

 

 61日より、中国全国でビニール袋制限令(限塑令)が実施され、スーパーやコンビニから一斉に無料のビニール袋が姿を消した。そして、その日からエコバックを使う人が急激に増えた。小売店側もビニール袋制限令に従わなければ容赦なく罰金も課されるわけで、素早い行動を見せている。

 

●年間40万トンの買い物袋を消費

 さて、ビニール袋制限令が出されるまで、いったい中国でどれだけのビニール袋が消費されていたのだろうか?中国国家発展と開発委員会の発表では、スーパーだけでも年間40万トン、これに市場や商店などもあわせると推定年間160万トンにもなるという。さらに、ビニール袋1トン製造するのに、その3倍の量の石油が必要であるので、少なくとも毎日1300トンの石油がビニール袋によって消費されていたという試算が出ている。[i]また、ビニール袋は200年たっても地中で分解されることがないといわれるほど、環境に対する負荷が大きい。中国の田舎を車で走っても、車窓から白いビニール袋のゴミが点在しているのをよく見かけるが、「白色汚染」と呼ばれるビニール袋による汚染は、消費活動の活発化にともない年々深刻化していた。ビニール袋のゴミ問題、石油価格の高騰が中国でも大きな影響を及ぼす中、ビニール袋の制限はまさに機が熟してきたと言えよう。

 61日に実施されて以来、効果はてきめんでビニール袋の使用量は激減しており、特に買い物袋に関しては75%以上減少したという例も報道されている。

 

ビニール袋制限令の概要 

 まず、特筆されるのはすべての小売店で、一律でビニール袋の無料使用が禁止になったという点だろう。また、有料でビニール袋が提供される場合でも、さまざまな制限が課されている。その一つが、ビニール袋の厚さ0025ミリ制限の規定だろう。これより薄いビニール袋は有償であれ使用禁止になった。安価なビニール袋が市場に出回ることを防ぐのが狙いだ。袋に一定の厚さと丈夫さをもたせることで、再生利用を可能とし、さらに安価なビニール袋の流通を妨げる目的が考えられる。

仮に顧客に個別にビニール袋を販売する場でも、コスト以下の値段をつけて販売することも禁止にした。また、販売されるビニール袋の価格もしっかりと顧客が見える場所に明記しなくてはならない。さらに、ビニール袋を製造する業者も、中国の定める基準に合格したものを提供しなくてはならず、以前のように無許可企業による原材料不明の劣悪なビニール袋の使用は禁止されている。

 また、罰則規定も明らかにされ、例えば無料で顧客にビニール袋を配布した場合、1回につき3000元となったほか、所定の場所にビニール袋の販売価格を掲示しなければ、最高5000元の罰金が課される。

 

違法企業淘汰の狙い 

 ビニール袋の使用自体が環境対策に大きな威力を発揮するが、それ以外にも非合法にビニール袋を製造している工場にとっても大きな打撃を与える狙いもある。中国ではこれまで、強度が非常に弱く、色も様々なビニール袋が商店などで使われていた。その多くは、中小の非合法企業が製造していて、有害物質を再生利用したものも少なくなかったのだ。特に、こうした一般的なビニール袋の製造が技術的にもそう困難はなく、投資額も少なく済んだため、工場が中国全国各地に拡大した。それが新たな環境問題にもなっていた。さらに業界内でのコスト争いも激しくなり、たとえば露店の点心などを入れる袋のように、今にも破れそうな薄いビニール袋も登場したほか、プラスチックゴミや使い捨て注射器などの医療ゴミを原料にしたビニール袋も実際にあったらしい。その証拠に、ビニール袋自体から悪臭がするようなものも実際筆者自身も見かけたことがある。今回のビニール袋制限令で、こうした袋の使用は一切禁止となった。さらに、袋には「環境のためにビニール袋の再生利用をすること」と明記しなければならず、袋に印刷する技術を持たない工場などは一斉に淘汰されることになる。

 

●違法な使用がないか徹底的に検査も

 中国国家工商行政管理総局では、61日~8日にかけてスーパーや市場でのビニール袋の管理を強化することを明らかにしている。特に、合法的なビニール袋の使い方をしているか、合法的な企業が製造しているビニール袋を使っているかが、大きなポイントとなっている。また、消費者からも「12315電話ホットライン」を設置して、小売店や市場などのビニール袋の使用状況について、違反情報を受け付けるなど、本腰を入れている。

 コンビニやスーパーに関しては、上海市内を見回す限り買い物袋の提供はほぼなくなった。これまで、飲料水を1本買うときにも無意識的に使われていた買い物袋も、61日から見事になくなった。大きな成果といえよう。ただ、市場などでは相変わらずビニール袋が使われており、今後はこうした食品に使われるビニール袋をどのように根絶するかが大きな焦点となるだろう。また、スーパーでも食品売り場や野菜売り場では一部透明のビニール袋が無料で配布されており、このあたりの規制が問題となるだろう。実際、こうした袋を失敬する市民も多数見かけた。

 

エコバックが新しいビジネスに

  淘汰されるビニール袋製造業者に対して、エコバックの販売がにわかに活況を浴びている。実際に、エコバックをもってスーパーに出かける市民が急増しており、中国全国の企業でも増産体制が対応している。とくに不織布メーカーにとっては絶好のチャンスで、各スーパーからのエコバック製造要請にフル稼働状態が続いているようだ。しかし、日本でよく見かける携帯に便利で、外見もかっこいいエコバックは上海でもそう多くなく、今後新しい市場が開拓されそうだ。

いずれにしろ、あっというまにビニール袋制限実施までに踏み込んだ中国政府の決断には拍手を送りたいと思う。(20086月記・山之内 淳

 

参考文献
 


[i] 『東方早報』2008530

 


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