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体験!寝台夜行新幹線(動車組)で北京から上海へ(2)


きめ細かいサービス
 室内は2段の寝台が向かい合わせに配置されている従来の寝台車と同じタイプ。テーブルの上には動車組ではすっかりおなじみとなった「西蔵の水」がサービスされている。

 寝台の座り心地は従来の軟臥(一等寝台)とあまり違いがなかった。正直言うと、10年ぶりでしかも新幹線の寝台とくれば相当寝心地がよくなっているのではと期待していただけに少し残念だった。しかし、それを思うと従来の軟臥は昔から随分レベルが高かったということになる。

 細かい設備はさすがファーストクラス仕様と思わせるものがあった。まずは何と言っても1人に1台ずつテレビが用意されていること。テレビは足元に配置されており、寝ながら見ることができる。頭の位置でチャンネルと音量が調整できる。チャンネルは中国鉄道のオリジナル番組など全部で4つ。夜スイッチを消しても朝になると自動的について目覚まし替わりとなった。
 枕元には他のお客さんに影響を与えないよう角度が調整できる読書灯もある。

 また、各部屋に暖房調整機能や乗務員の呼び出しボタンなどがあり、できるだけプライベートが保たれるよう配慮されている。各部屋と廊下にコンセントの差込口があり、パソコンの使用や携帯の充電ができるようになっているところもビジネスマンへの心遣いが感じられる。

 また今回もっとも感心したことのひとつは、4色色違いのスリッパが備えられていたことだ。スリッパがあっただけでも驚きだというのに、下手なホテルよりも上質なもので、しかも同室の客と履き間違えないように心配りがされている。日本の旅館などでは歯ブラシの色やタオルの色を違えるというのは最近よくあるが、まさか中国でこのようなきめ細かいサービスが受けられるとは思っても見なかった。さすがはファーストクラス仕様である。

利用しやすいトイレ
 次に供用のファシリティをチェック。一番気になるトイレは、車両ごとに和式と洋式の2タイプがあり、ペーパーも備え付けられている。洋式タイプには赤ちゃんのオムツ替えシートもついている。乗客数が少ないということもあるが利用状況もマナーが保たれており、従来の列車のトイレのように行くのがためらわれるということがない。常に廊下を巡回している乗務員もこまめにモップがけをしていた。
 洗面台も車両ごとに2つずつあり、下車間際の混雑時にも便利だった。

手ごろな値段の食堂車
 8号車の食堂車ではスープやおかゆ、スナックのほか、紅焼肉定食などのしっかりした食事系もそろっていた。価格は10元~30元程度と利用しやすい設定。部屋に持ち込んでたべることもできる。しかし出発が21時半過ぎ、到着が翌朝7時半なので、実際のところ車内で食事を取る機会は少なそうだ。筆者も今回は食事を済ませてから乗車したのでここで食べる機会がなかった。それより、ワインからウイスキーまで12種類ものアルコールが取り揃えられていることころを見ると、バーとしての使い方のほうが主流なのかもしれない。ただ筆者が見学に行ったときには乗務員と鉄道関係者と思しき人たちが集まって談笑していただけで、一般の客の姿はなかった。

肝心の寝心地は・・・
 車両の調査を終えて部屋に戻るとすでに時間は22時。乗務員が廊下のブラインドを下ろして回っており、乗客たちもベッドにシーツを敷くなど就寝の準備を始めている。乗務員がタオルや歯ブラシ、雑誌などを売り歩いていた。

 筆者も自分の寝床である上段に上り寝る支度をする。背筋を伸ばして座るにはやや低い天井に多少の窮屈感を覚えながら布団を整えて横になった。久しぶりの夜行列車の旅に少し興奮気味だったのでまだ眠くはなかったが、同室の人たちはみんな寝てしまったので、見るともなしにテレビのチャンネルをいじったりしてみた。

 それにしても暖房がよく効いている。はじめは薄い毛布一枚で心配だったが、そのうち汗をかくほどになった。温度調整はすでに最小の状態だったので我慢するしかない。となりのおじさんも毛布もかけないで寝ていた。

 そうしているうちに、規則的な列車の走行音に誘われて眠りに落ちたが、ここからが長い夜の始まりとなった。ぐっすり眠った気がして目を覚まし時計を見ると12時。まだ2時間も寝ていない。まだずいぶん寝られると喜んで再び眠りに着いたのもつかの間、また目が覚める。12時30分。また寝る。目が覚める。1時。その後も30分おきに目が覚め、ついぞ熟睡できないまま朝を迎えた。こんなに夜が長く感じたのは久しぶりだった。

 眠れなかったひとつの原因は、旅慣れないせいだと思う。しかしもうひとつの原因は予想以上の揺れだった。かつて乗ったことがある寝台列車は速度がそれほど速くなかったため走行音と揺れのインターバルが長く、それがむしろ心地いい眠りを誘ったのだが、200キロ以上の高速で走る動車組は走行音と揺れのインターバルが短く、断続的に続く小刻みな揺れが呼吸のリズムに合わなかったという感じだった。他にも、頭の位置が低くなる格好で車両が傾くことが多かったので、頭に血が上る感じが気になった。とまあ、ひとつが気になると次々と別のことまで気になってますます寝苦しくなるのだった。

 朝6時に唯一の途中停車駅である常州に到着。少なくない数の乗客の乗り降りがあった後、列車は再び滑り出し、終点上海へとひた走る。
 朝7時、ようやく空が白み始めたころ、乗務員が各コンパートメントに客を起こしに来た。同室のほかの3人はその声で目が覚めたようだった。ということは、みんながみんな筆者のように眠れない夜をすごしたわけではなさそうなので、この寝心地に関する所感はあくまで個人的なもののようだ。
 7時38分、上海駅到着。重い頭でホームに降り立つ。もしこのまま会社に向かわなければならないとしたら、今日1日はまったく仕事にならないだろうと思う。下車する際に、すべてのコンパートメントをチェックしながらスリッパをかき集めている乗客がいた。

はやり軍配は飛行機に?
 今回の寝台夜行新幹線の旅、総合的に言うと、やはりこの乗客率が物語っているように飛行機のほうに軍配が上がるのではないかという気がする。時間とホテル代を節約できるという寝台夜行列車ならではのメリットも、まったく眠れないという状況の中では少しも意味をなさない。午前中を移動に費やしてでも前の晩ゆっくり睡眠を確保したほうが、翌日の仕事の効率ははるかにいいだろう。もちろんこの列車の運賃がもっと安ければ話はまた別なのだが。
 設備に関しても、ファーストクラス並みというならばさらにワンランク上の心遣いを期待したいところ。たとえば、それぞれの寝台には最低限のプライバシーが確保できるようにカーテンをつけるなど。洗面台のところにも上半身が隠れるくらいのカーテンがあるといい。また、女性専用コンパートメントや完全個室などを備えてみたらまた違う反応があると思われる。

 何はともあれ、あの動車組に寝台を導入したということ自体は画期的で思い切ったことだった。何しろ日本では絶対に体験できないことである。

 今後は、飛行機とその利用価値を張り合うのではなく、運賃の面、サービスの面などでさらに寝台夜行動車組ならではの独自性をだせたら、十分生き残っていけるのではないかと思う。何よりも寝台夜行列車には飛行機のスマートな旅では味わえない旅情があるので、対象とする客層をビジネスマンからもう少し門戸を広げて、一般にも利用しやすいようにコンセプトを少し変えてみたらいいかもしれない。もちろん「質」を落とさずに、ということは忘れずに。
 あとひとつ付け加えるなら、乗務員のお姉さんたちにもう少し笑顔が欲しい。フライトアテンダント並みの条件と待遇で採用されているという彼女たち、誇り高く仕事をするのは結構なことだが、サービスの基本である親しみやすさと腰の低さも是非身につけてほしいところだ。

DATA

 

北京駅

上海

北京

D301

21:39

07:38

 

D302

 

21:46

07:45

D305

21:44

07:43

 

D306

 

21:41

07:40

 

北京

杭州

北京

D309

21:34

08:56

 

D310

 

20:13

07:35

運賃
北京-上海間 上段655元 下段730元 2等座席327元
北京-杭州間 上段820元 下段730元 2等座席353元

(前編は、こちら>>

(2009年1月記)







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