|
6月14日は中国で第3年目を迎える「文化遺産日」。上海市文物管理委員会では、全市内90カ所の文化遺産を6月14日~15日の2日間に限り無料で一部公開している。このイベントは上海市民の間でも人気で、今年も多くの市民が見学に訪れていた。上海のオールド建築の多くは、現在でも現役で事務所や住宅、学校として使われているため、日頃はなかなか自由に見学して写真撮影をすることができない。 |
|
2008年の公開イベントでは、筆者は陝西北路と徐匯区の建築物を見学に出かけた。公開時間は、両日ともに午前9:00~11:00、午後13:00~16:00まで。時間的に十分ではないので、自転車などで地図を見ながら巡るのがベストだろうが、今年は天気が心配。なお、各見学エリアでは受付があって、地図つきの解説小冊子を無料配布している。英語の説明も入っているので、記念にぜひもらいたい。公開建物
リストはここに掲載されている。
ではその中から、いくつか筆者の印象に残ったものをご紹介しよう。 |
 |
|
配られた資料 |
|
1.徐匯区エリア
●在君楼(岳陽路320号)
現在は中国科学院上海分院生理所が使用している建物。設計は日本人建築家内田 祥三氏(うちだ よしかず)。東京帝国大学の総長を務めた内田氏であるが、関東大震災の復興時に、東大構内の建物復旧に業績を残している。
「内田ゴシック」という独特のデザインが特徴だが、この上海の「在君楼」は内田氏の設計による。これとそっくりのデザインが東大図書館だというのも興味深い。実は、筆者も研究所に通っている頃、よく中国科学院にはお世話になったのだが、非常にダイナミックな建築物でありながら、日本人が設計したということを知らなかった。とにかく、よく目立つ荘厳な建物である。
|
|
 |
 |
|
1930年に建設され、もともとは上海自然科学研究所が入っていた。このあたりは文教エリアでもあり、研究所が多い。正門からはいると、正面に左右対称のどっしりした建物が目に入る。建物は、上からみると「日」の字に構成されていて、中庭が2カ所ある。今回の公開では、1階部分ロビーと2階部分が見学できるので、ぜひ中に入って見てみよう。こうしたゴシック様式の建物は、すでに中国では数少なくなっており、貴重な建築物として上海市優秀歴史建築に指定されている。 |
|
 |
 |
|
その向かい側(岳陽路319号)にある1928年建設の旧フランス総領事館の建物もぜひ見ておきたい。イギリス様式の洋館で、イギリスのサッチャー元首相など著名人も見学に訪れている。 |
|
 |
|
●国際礼拝堂(衡山路53号)
ここも、なかなか普段は入れない教会の一つ。今でも現役で教会として使われているため、普段は写真撮影できないが、今回の公開期間中は自由に中に入ることができる。筆者もクリスマス礼拝に参加したことがあるが、3時間以上並ばないと席が確保できないほどの人気だった。
|
|
 |
 |
|
メインの礼拝堂は1925年築で、その隣に1936年築の建物がくっつく構造になっている。上海では今でも多くの教会が残るが、完成当初は上海最大の教会だった。主にアメリカ人が多く礼拝に訪れたため、アメリカ教会と呼ばれたこともある。日中戦争前までは、アメリカ人が代々牧師に就いていたそうだ。 |
|
 |
|
特徴は、なんと言っても木造の大屋根だろう。ゴシック様式の随所に残している。上海の建築物としては珍しく暖房も設置されていて、託児所も完備されていてその当時としてはかなり設備が整っていたようだ。
今回の公開日では、BGMがながされるなど、なかなか粋な計らいがされている。壁面のツタといい、上海の近代史を肌で感じることができる数少ない建築物の一つだと思う。礼拝堂の長いすに腰掛けてみて往事を偲ぶのもいいだろう。 |
|
 |
|
岳陽路190号 |
|
●これ以外にもフアン必見の建物が続々
2007年にも公開された東平路9号にある蒋介石と宋美齢ゆかりの「愛廬」も外側だけだが、見学が可能。衡山路811号の「小紅楼」は1921年代に建設された洋館で、1930年代にフランスのレコード会社EMIが入っていた。いま、周辺は徐家匯公園として整備されている。
|
|
 |
 |
|
「愛廬」 |
|
 |
|
永嘉路557号 |
|
2.陝西北路エリア
地下鉄1号線の駅でもお馴染みの陝西南路だが、北へ上がっていくと延安路を超えたあたりから陝西北路と呼ばれる。静安区ではこの陝西北路エリアを整備して、歴史を感じることのできる通りに整備している。2008年に新しく完成した観光スポットの一つで、これからの整備が期待される。 |
|
●西摩館
陝西北路500号に位置し、この陝西北路エリアでは、必見の建築物だ。陝西北極東エリア最大のユダヤ教の教会で、1920年に完成した。上海で現存する最も古いユダヤ教の教会でもある。ナチスの迫害をのがれて、多くのユダヤ人が上海にやってきたが、その当時上海には7カ所のユダヤ教教会があった。しかし現存するのはそのうち3カ所だけになっている。 |
|
 |
 |
|
その中でも、この西摩館は新古典主義様式の建築と言われていて、外見からはギリシャの神殿のような存在感のある風格を持つ。内部には祭壇が設置されていて、天井からぶら下がっている照明などは、当時のオリジナルのものらしい。祭壇部分には、ヘブライ語の表記があり、当時を物語っている。アメリカのヒラリー・クリントン夫人が、上海訪問の際に、必ず訪問したい場所として指名したぐらい、由緒高い教会だ。ちょうど、今はユダヤ人の上海での生活を紹介する展示が行われている。こうした資料を見ながら、その当時の上海が如何にユダヤ人たちの生命と財産を守ってきたか、理解することができる。 |
|
 |
 |
|
筆者が訪れたときは、あまり見学者は多くなかった。教会内は非常に静かで、中には椅子も設置されている。天井の造形も美しく、もう少しきれいに修復してほしいところだが、今後を期待したいところだ。ここは、館内撮影禁止なので注意が必要。 |
|
●そのほかの陝西北路エリア
香港特別行政区の初代行政長官であった董建華氏が幼少のころに住んでいた家もこのエリアに保存されている。董建華氏は1937年に上海で生まれた。こうした有名人の建物は、内部までは公開されていないものの、目立つように札が掲げられている。運が良ければ中まで見せてもらえることがあるので、聞いてみよう。 陝西北路エリアはユダヤ人など外国人も多く住んでいて、その当時の面影が残る洋館も少なくなく、多くの有名人も輩出している。 |
|
 |
 |
|
董建華氏が育った家 |
映画「色・戒」に登場した平安大楼 |