 パラリンピックのマスコット“福牛”
北京では9月6日から17日までの日程でパラリンピックが開催されています。
オリンピックが閉幕し「あ~あ、なんか終わっちゃったな」なんて思っているそこの方、まだ早いですよ!北京はまだまだ熱戦の最中。毎日生まれるドラマと感動に沸きあがっているんですから!
パラリンピックというと、どうしてもオリンピックの影に埋もれてしまうという印象が強く、どんな競技が行われているのかさえあまりご存じない方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は私もそんな一人でした。ですが運よく当たった開幕式に参列してみたところ「これもれっきとしたもう一つのオリンピックじゃないか!」ということを実感した次第。翌日には早速チケットを手配し、駆け足で観戦してきました。
まずは硬地滾球(ボッチャ)という競技。これは1988年のソウル・パラリンピックで公開競技として行われ、1992年のバルセロナ・パラリンピックから正式競技となりました。私は実は今回初めてこのボッチャという競技のことを知りました。
これは主に脳性麻痺者が行う競技で、個人戦、ペア戦、チーム(3人)戦があります。男女の区別はありません。
簡単にルールを説明すると、両者は赤と青に分かれ、それぞれ6つずつある手球を白い的球にどれだけ多く近づけられたかで勝敗が決まるというものです。球はツルツルな球体ではなく、いわばお手玉のような感じ。なので投げた時にはピタッと落下し、転がすとポテポテポテと転がって止まります。
こう聞くと、なんだ簡単じゃないかと思うかもしれませんが、侮ることなかれ。選手たちは不自由な体をたくみに操り、寸分もたがわぬコントロールで手球をピタリと的球に寄せてくるのです。この緊張感、何かに似ている気がしたのですが、そうビリヤードに近い感覚でしょうか。白い球の周りに赤と青の手球がひしめき合う中、その隙間を縫ってさらに白にぶつけてくるという離れ業があちこちで炸裂しているのです。体が自由に動く私が挑んだところで勝ち目はなさそうです。それはそうですよね、これは世界最高の大会なのですから。
日本人選手も多く参加をしていました。私が見たのは予選でしたが、次々と勝ち抜いていく様子に拍手を送りました。
 |
 |
会場の様子 |
順番に投てき |
 |
 |
投げる時はこの線から出てはダメ |
球の位置関係をそばで確認 |
 |
|
白い球からの距離によって勝敗が決まる |
次に見たのは視覚障害者柔道。健常者の場合と違って、視覚障害者柔道は最初から組み合った状態で試合が始まります。
最初の印象は目が見えなくて柔道が出来るのだろうかということ。相手がどんな技を出してくるのかが全く分からないわけですし、目が見えなければどんな競技でも同じですが事前の対策もままなりません。それはお互い同じ条件ではありますが、まさに組み合った瞬間からの全身の感覚のみが頼りなのです。
ですが最初の心配は全く杞憂でした。本当は見えてるんじゃないの?って思うくらいのキレのある技と駆け引きの連発で、見ている私もオリンピックで見た時と全く同じように思わず身を乗り出してしまいました。
どうやって技を掛けるのか、どうかわすのか。目で見て学ぶことができない彼らは、ただひたすら倒され投げつけられて覚えるしかありません。頭でなくまさに体で会得した技には一瞬の躊躇もありません。キレがあるのは当然のことですね。
 |
 |
会場の様子 |
審判に付き添われて入場 |
 |
 |
試合は初めから組んだ状態で |
キレのある技が次々と決まる |
 |
|
次は車椅子バスケットボールです。車椅子バスケットボールのチーム編成には決まりがあり、選手には障害の重いほうからレベル1~4.5の持ち点が定められていて、一チーム5人の持ち点が14点を越えてはいけないということになっています。これは障害の軽い人だけでチームを組んだりすることがないようにとの配慮です。選手を見てみると、確かに大腿部から切断されている人、片足だけの人、前傾姿勢が取れない人など様々でした。各階級ごとに試合が行われるより人間味があるというか、いいですよね。
以前テレビで試合を見たときは危なっかしいな~というのが印象でした。何しろ車椅子同士がぶつかり合ったりするのですから手を挟んだりひっくり返ったりしたらどうするんだろう、ってヒヤヒヤしていました。
実際にこの目で見てみると、やはり危なっかしいのは事実なんですが、それよりも感心したのが機敏な車椅子の操縦の仕方や、車椅子を走らせながらのドリブルテクニック。それにテレビで見る以上にスピード感があるので試合にグングン引き込まれていきます。競り合いの中ではやはり車椅子がひっくり返ったりすることもあるのですが、それもものともせずにサッと起き上がって続行です。
あと、自分の経験上、座った姿勢でボールを投げるというのは、力が入らないから高くや遠くへは飛ばしにくく、そして非常に疲れるのですが、もちろん彼らは座ったままでシュートだろうがパスだろうがビュンビュン飛ばします。それだけでも私にとっては感心です。
パラリンピックのことを知れば知るほど他にも見てみたい競技がたくさん。チケットは鳥巣と水立方の分を除いてはまだ会場でも販売しているようなので、ネットでの予約はもちろんですが、直接出かけてみてもいいかもしれません。
ちなみにパラリンピックのチケットのほとんどは自由席。空いている席に自由に座ってください。車椅子の方はチケット購入の際にその旨を告げると専用の席を用意してくれます。
大半の日本人にとって、いえ、実際私自身がそうであったように、“パラリンピックはオリンピックのおまけ”という認識が正直なところではないでしょうか。
このことについて、元柔道日本代表で現在参議院議員の神取忍さんが憂慮するレポートをまとめておられます。
諸外国ではパラリンピックはオリンピックと同じ位置づけで、社会的なバックアップも整っており、選手も同じくらいの注目と人気を集めているということですが、それに比べると日本は、「障害者のリハビリ」程度にしか考えられていないため、会社の理解を得られずに出場を諦めざるを得ないケースなどもあるそうです。
また金銭的なバックアップも全く整っておらず、指導者の大会参加の費用は全て自腹で、選手本人も30%を自己負担しているそうです。
これって、日本代表として戦っている選手や指導者に対してかなり失礼な話だと思いませんか?オリンピックとは違ってメダリストへの報奨金ももちろんありません。
日本という国の、障害者や弱者に対する姿勢が如実に現れているのが実はこのパラリンピックなのではないか。そんな風に感じてしまったのでした。
自分の人生を狂わせるほどの病気や事故に遭遇し、悲嘆にくれていたであろう彼らが、どん底から這い上がって今は、人々を勇気付ける存在となっている。汗を流す彼らの姿を見て、月並みな言葉ではありますが心から感動しました。別にヒューマニズムとかではありません。きっと一目でも観戦した人なら、だれもがそう思わずにはいられないでしょう。
ということで、今からでも遅くありません。足を運べる機会がある方は是非会場へ、無理という方もチャンネルをすぐ変えてしまわずに、じっくり観戦してみてください。きっとパラリンピックに対する認識が変わりますよ!
(2008年9月記)
|