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まさに映画『功夫』の一シーン~上海隆昌公寓~



 まだ肌寒い2月の午後3時半頃、上海市隆昌路にある古いアパート、「隆昌公寓」を訪れてみた。中庭には、今にも分解しそうなほど使い込まれた三輪自転車が放置されていて、1人の女性が干してあった洗濯物を取り入れていた。西日の差し込むアパートの片隅には、なんとなくもの悲しい雰囲気が漂う。

 あの周星馳(チャウ・シンチー)監督の映画『功夫(和名:カンフーハッスル)』に出てきた、四角く囲まれたアパート密集マンションが、実は上海にもあったということで、最近話題になっている。マンションの南北に階段があり、階段から回廊状の廊下がつながっている。廊下はアパートの内側をぐるりと旋回しており、それぞれの世帯をつないでいる。そして、様々な色の洗濯物が干されていて、風になびいていた。非常に壮観である。


周星馳監督『功夫』の一シーン。バックの建物は隆昌公寓そっくり

●歴史

 隆昌公寓は、上海市北部の隆昌路362号にある。1920年~30年代に建設されたようだが、もともとは公共租界地の警察(巡捕房)があったところ。新中国建国後、楊浦区公安局が使用していた。話によると、その当時では楊浦区でもっとも立派で有名なアパートの一つで、主に公安の家族が住んでいた。ただ、時代の移り変わりとともに公安関係者が徐々に出ていき、一般市民が入居してきた。

 現在でも、260世帯あまりが生活している。地元上海の上海人が中心だが、最近地方出身者も住み始めているという。生活感はいっぱいで、廊下には洗濯機など家財道具が所狭しと置かれていた。廊下の手すりの部分は、台所のように野菜を切っている人の姿も。

 ここの廊下は、人々のコミュニケーションの場所でもあり、毛糸で何かを編んでいる人や、麻雀を楽しむお年寄り、さらに自作の布団を打っている人もいた。


廊下の手すり部分は台所化している 野菜を細かく切って野菜饅頭を作っていた
長い長い廊下 ネズミ退治は個人の責任!上海のこういう古いアパートにはネズミが非常に多い

●上海の一つの生活様式

 現代の上海では、こぎれいな高層マンションが林立し、ベンツやBMWを乗り回す金持ちもおれば、こうした古いアパートに肩を寄せ合って生活している人もいる。三階の廊下を歩いているとき、おばあちゃんが私に教えてくれた。「私がここに引っ越してきたときは、ここのアパートは非常に綺麗だったのよ。住んでいる人も少なかったし。」彼女はここに住んでもう30年以上になるという。まだ改革開放がはじまる以前の話である。おばあちゃんはところでは、廊下に面する部屋をモルタルで仕切って、シャワーするスペースが作ってあった。しかし、未だにトイレがないのだという。
 できることなら、早く立ち退きにあってもっと広いアパートに移りたいそうだが、住めるのならとりあえずここに住んでおこうという。古いアパートのためか、所有権の手続きが大変なのか、不動産権利書にあたる「産権」もないそうで、売るにも売れないのだという。

 それでも、ここに住んでいる庶民の生活は、非常に悠然としているようにも見える。アパートの外の上海の雑踏とは、一線を期している。
 「ここのアパートはもう古すぎるんだ。管理もできていないし、修理もろくにできなくなった。お金のある人はとっくに引っ越ししているんだよ。」横からおじさんが口を挟んできた。

 2004年には、隆昌公寓は「移動できない文物」として保存されることが決まっている。一応保存建築なのだ。それでも、住民にとっては普通の住宅に変わらず、少しでもいいところに引っ越ししたいというのが、やっぱり本音であろう。

植木鉢がたくさんあったが、ホコリをかぶっていた 犬が顔を覗かせていた
手すりにはしっかりと落書きが 楊浦大橋を望む


さすがに自転車王国の中国。中庭には自転車が並べられていました。

入り口から覗いてみる

通りからは、中にこれほど大きな空間があるとは到底気がつかない

隆昌公寓の外観



◎住所:

上海隆昌路362号 【 地図

◎交通:

路線バス: 公交935、813、868、25等

(2009年2月記  山之内 淳







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