ポスト最愛ブランドは?
かつて某女性誌で「幻バッグ」と題し、ウエイティングリストは2000人!と気の遠くなるほど入手困難な「クロエ」と「バレンシアガ」のバッグについて取材したことがある。新作を借りての撮影は困難を極め、その代案として海外で入手した人の私物を借りることになり、担当編集者とずいぶん頭を悩ませた。
ところが、昨年、来海したての街中では、血眼になって捜した、この「幻バッグ」が、右から左から、私の横を通り過ぎて行った。それこそ、幻なんかじゃない。なんと! あの苦労はナンだったの……と、力が抜けてしまったほどだった(注:その大半はニセモノとも言われる。ということは、やはり幻か?)。おまけに、日本で売り切れだったマーク・ジェイコブスのバッグも、南京西路のショップに、ちょこんとディスプレイされていたなんていうこともあった。さらに、東湖路沿いで路地を入ったところにある“diage” 2Fにあるセレクトショップ “method” には、今年NYでブレイクし、日本のファッショニスタをも虜にした「BULGA」のバッグが入荷していた。
〈“diage(ディアージュ)” ……この夏オープン。’30年代の老房子の一軒家を改築。レストラン、バー、セレクトショップ、ギャラリーで構成される〉
とはいえ、その「幻バッグ」たるもの。お値段のほうは、一流ブランドと肩を並べる。同じ金額なら、やっぱり一流ブランドを買う、というのがまだまだ根強い心情だと上海の百貨店の人に聞いたことがあるけれど、その一方で、ブランドロゴに頼らないデザイン勝負のこの「幻バッグ」系統への嗜好は、最愛3ブランドに続く、新しい潮流といえる。これらのバッグのデザインの特徴は、風合いのあるアンティークレザーに、ステッチが施され、重量感のあるバックルや鋲(びょう)がポイントになっていたり、風になびくようなフリンジ使いがアクセントになっているなどディテールにひと工夫があるということ。ここに、人気が集まったのは、もともとインパクトのあるデザインものが好みなのと、トレンドとが合致した結果かもしれない。
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伝統と歴史を誇る一流ブランドには、ネームバリューにも勝る確かな価値がある。手にしたときは、自分自身までクラスアップしたかのような甘い錯覚も味わえる。そして、重要なのは、ブランド本来のもつ気品と、その持ち主とがしっくり馴染んでいるということ。「ブランドが歩いている」と後ろ指さされるのは美しくないっ。というのは老婆心? そんなことを気にせず、好き好きパワーで持ちこなすのも、若者の特権ともいえようか。
ストイックな精神世界に心身を委ねた、ある日のヨガのクラスでのこと。床に手をつけ、前方を見つめ、無の境地に至ったとき。そこにはブランド云々は一切ない。欲に惑わされない、平らかで穏やかな世界が広がっていく。
ところが、指先をピンと伸ばして合わせた両手の平を、天に向かって伸ばし、胸元までゆっくり振り下ろしたとき、静寂の世界に異変が起きた。あ、カルティエのパシャC。向かい合わせになってポーズをとる先生の手首には、ピカピカのカルティエ・パシャCの時計が輝いている。
ブランドは、お年頃の伝道者をもあっさりイチコロにしてしまう魔力を持っている。
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今月のとっておき
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'04.4外灘3号にArmaniがオープン、その後、18号にはErmenegildoZegna(アジア最大の旗艦店)やCartier、9号には夏姿(台湾系ハイブランド)といった、一流ブランド店が、外灘エリアの旧い建造物の内部を改築(リノベーション)した建物で、続々とオープンしている。なかでも、最も新しいのが、この夏6号にオープンしたDOLCE&GABBANA。売り場面積は1100平方メートル。レディースとメンズの二つのブースから成り立ち、同じフロアには スタイリッシュなモダン家具を置いたバーもある。
建物自体は1897年竣工、イギリス人設計士によるゴシック式建築を取り入れた、外灘で最も旧い建物のひとつ。その昔は中国通商銀行だった。今回の改築に当たっては、3000万ドルが投じられたといわれている。フロアは4階から成り、1階はDOLCE&GABBANA だが、2~4階は日本の会社サントリーの資本も入り、飲食店も展開。他、ギャラリースペースや音楽サロンなど、格調高い雰囲気に基づいた空間で構成されている。現在、なお、一部改築中だ。
外灘にある租界時代からの建物は他、1号、2号、12号、27号がある。今後、海外資本により、リノベイションされていく建物としても注目を浴びている。
~おまけ~
ちなみに、「号」(號・hao・4)とは、順番を表す助詞。つまり、ここでは日本でいう“番地”を表す。中文式なら数字の後にこの文字をつけるだけだが、英字表記だと差別化を意識してなのか、それぞれ異なる。というわけで、ちょっとご紹介。(“Bund”は“外灘”の英字表記)
3号 → three on the Bund
5号 → No.5 Bund
18号 → Bund 18
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写真・文 石川リエ(2006年12月在上海)
石川リエのブログ「Mrs.上海」
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