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■■第12回 リーダーになりたい -変化■■

年が明け、春節前に日本人の仲良しのお友達が帰国することとなりました。3月末には日本人学校へ入学するお友達が幼稚園を終えることとなり、元々クラスに4人いた日本人は4月からはうちの子どもだけとなることがわかりました。日本人ではありませんが、突然帰国してしまったクラスメートもいました。外国人の暮らしは流動的で、頻繁に人の出入りがあります。
一方春節明けから、もう一人日本人のお友達がクラスに加わりました。彼のお母さんは日本人、お父さんは中国人のハーフです。今まで中国のローカルの幼稚園にいたため、中国語はネイティブのように流暢に話しますが、英語はまだ話せません。もちろん日本語は話せます。やはり新しい環境に戸惑いぎみの様子です。
私は何度か子どもに、自分が入園したときのことを思い出して、そのお友達のケアをしてあげるように言いましたが、2月、3月の間はまだ他の日本人のお友達もいたので、あまり実感がないようでした。もちろんまだ子どもがうまく通訳なんてできるとは思えませんし、本人もそんな自信はないでしょう。一緒に遊んだり、作業などを手伝ってあげるだけでもいいからやってみようと勧めました。この頃には子どもは先生が普段話すこともほとんど聞き取ることができ、自分の意思表示にはそれほど不自由しないようでした。ただ、詳しい状況描写などはまだあまりできません。
4月からクラスの日本人は子どもと新しく入ったお友達だけになりました。仲良しが次々いなくなり、少し寂しそうでした。しかもいなくなったお友達は小学校へ上がり、自分はまだ幼稚園。私は子どもが戸惑いを感じているか心配していましたが、親の心配とは裏腹に子どもは「ぼくはクラスのリーダーになりたい。」と言い始めました。
しかしクラスにはドイツ人の男の子が不動のリーダーの地位をすでに築いていました。彼は昨年も同じクラスにいた、つまり2度目のReceptionです。こういうことは珍しいことではなく、その国の小学校の入学時期に合わせて、同じ学年を2度したり、逆に1年とばして調節しているようです。そのドイツ人のお友達は他の子どもたちより一回り大きく、落ち着いているのでクラスのみんなから頼りにされているようでした。それに引き換えうちの子こどもはおっちょこちょいのお調子者です。しばらくすると「僕はリーダーになるのは無理でも、サブリーダーになるんだ。小学校になったらリーダーになるんだ。」と一回り現実味を帯びたことを私に話してくれました。つい半年前はクラスのみんなとコミュニケーションも取れなかったのに、「クラスのリーダーになりたい」という本人の希望だけでもとても進歩したものだと感じました。おそらく「リーダー」という概念も日本にいる頃は知らなかったのではと思います。
「ただ、偉そうにするのがリーダーじゃないんだよ。クラスや小さい子で誰か困っていたら助けてあげたり、クラスで話しがまとまらなかったら、それをまとめるのもリーダーの仕事なんだよ。」とリーダーの役割を教えました。どうやら先生からも「リーダーシップ論」は聞いていたようです。
もちろん子どもはそのリーダー格のドイツ人のお友達のことも大好きで、一目置いていました。彼が卒園とともに別の国へ行ってしまうことをとても残念に思っていました。
私は当時子どもの様子が気になり、送り迎えの時に先生によく聞いていました。子どもは最近片寄ることなくいろんな友達と遊んでいて、仲良しも何人かいる。ケンカも少なく、「Time out」(先生が仲介に入り、小休止、反省すること)になることもあまりないというのでとりあえず、安心しました。先生も「リーダーになりたい」という子どもの意思を見抜いていました。入園した当時は恥ずかしそうにしていたことを思うと、積極的に自分から質問をするようになり、たいへん早い変化だったと驚いていました。ドイツ人のお友達が一時帰国して2週間ほど休んでいたときは、子どもはクラスのリーダー格を取れたようで、とても嬉しそうに話してくれました。
確かに課外活動で取っていた太極拳では、みんなの手本になれるようにしたり、休んでいる子がいると、「もう一度やろう」と励ましている姿をよく見ました。かなりおせっかいかなと思ったこともありました。
日本人は「リーダー」というとあまり良いイメージがなかったり、ひたすら「平等」を強調する学校社会のようですが、アメリカ人の先生からすると、クラスにリーダーがいるのは当然のことで、むしろ先生を助けてくれる役割です。子どもはクラスの中でドイツ人のお友達に次いで誕生日が早く、クラスの子どもたちの年齢幅は1年半程度あります。さすがに幼児で1年半の幅は大きく、年齢が上の子はより落ち着いて見えました。
後から考えるとこの4月から卒園までの6月までの間、子どもの英語表現は非常に豊かになりました。ちょうど学年のしめくくりにあたる時期でもあり、今まで子どもが自分の頭の中で積み上げてきたことが、パッと開いてはじけたようでした。自在に言いたいことを身体いっぱいで自分を表現します。お友達の入れ替わりで端では心配しましたが、自分の役割に目覚めたことでより厚みのある日々を送ることができました。
次回はいよいよ幼稚園卒園です。
(林 秀代 2007年9月記)
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