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■■第11回 幼稚園で科学■■

幼稚園でも科学、つまりサイエンスの時間が週に何時間かありました。ほぼ一ヶ月単位でテーマを決め、観察や考察をしたり、フィールドトリップに行ったり、また本を読んだり、絵を描いたりします。今日本では1,2年生は理科ではなく、社会と理科を合わせた生活科という授業になっており、幼稚園で科学とは早すぎると思われる方もいますが、それほど難しいことをしていたわけではありません。
それはある意味ありがたいクラスでした。英語が日に日に身についてきている様子はわかりますが、外国語なので以上言葉にバリエーションや応用が効くわけでもなく、語彙は貧弱です。「太陽」や「星」、またちょっとした動物の名前や身体の部位など身近な言葉はわかりますが、幼稚園や生活で使わない言葉はあまり知る機会がありません。例えば大人でも英語で「茎」、「化石」、「さなぎ」という言葉を知らなかったりしますね。子どもの年はReceptionという小学校への準備のための学年でもあるので、小学校へ上がってサイエンスの授業についてゆけるように、英語で科学のイロハぐらいは知っておく必要があります。
科学の授業といっても幼稚園ですので、日常やふと振り返ることに対して「どうして?」と思う気持ちが大切ですから、身近な道具や自然の素材を使うものばかりです。植物はどのように育つのか、影はどうしてできるのか、腕はどうしてうごくのかという自然や身体の機能などです。私が子どもに望んだのは、「どうして?」と単に人に聞くことから、自分に対して「どうして?」という問いかけや、なぜそうなるのか議論したり、説明できるようになることです。
子どもはクラスの中では一番年上の方で、知識の量ではかなり有利です。例えば雨がどうして降るのかは、すでにそれについて述べている日本語の絵本を持っています。水滴が太陽の光で蒸発し、雲となり、雨となって降るということは知っていますが、英語では説明できません。すでに理解している原理を英語でもう一度教えてもらったときには更によく解ったようでした。
子どもの絵本の中では簡単な言葉で書かれており、「蒸発」という言葉は出てこなかったと思いますが、英語で説明するとなると「vapor」といった科学的な言葉が欠かせません。英語でも辞書の説明のような簡単な言い回しもありますが、毎回それを使うと回りくどくなります。日本語の方が簡単な言葉で言い換えやすいものです。子どもがある日湯気が上がっているのを見て「water vaporだね」と言ったのには驚きました。大人から見るとなんだかすごいことを習っているような気になります。
教材は豪華で最新の教材を幼稚園が買い揃えるのではなく、各家庭に本やポスター、おもちゃ、DVDなどがあれば貸してほしいというリクエストがありました。題材は恐竜について、また宇宙などでした。子どもは自分の家から持っていった本やおもちゃが教材として使われるのを誇りに感じ、とても得意げでした。みんなで大切にその教材を使うということも学習できたようでした。
人間の身体を学習していた時には、病院(この時は歯科医院)へお医者様のお仕事を子どもたちに見学させたいので、子どもたちを見学させてもいいというお医者がいたら紹介してほしいというリクエストもありました。子どもたちはお行儀よく(?)ドクターの仕事を見せてもらい、質問もさせてもらったようでした。
家庭でもできる範囲で学習に協力できたのは、親としても気持ちの良いものでした。
北京にはたくさんの博物館があります。有名な北京動物園や科学技術館、天文館に古動物館など、毎月のようにフィールドトリップがあり、大きな恐竜の骨組みや化石、プラネタリウムなどを見て興奮して帰ってきました。
どうやら子どもの担任の先生自身が科学好きらしく、先生のトークもとても楽しかったようです。みんなで大きな太陽系の惑星の絵を描いたり、等身大の身体の絵を描いたり、ダイナミックな楽しい授業をしてくれていました。一つのテーマでお絵かきからフィールドトリップまで連携した授業が組めるのは、幼稚園ならではだと思います。
「Jupiter(木星)というのは太陽系の中で一番大きな惑星でかっこいいんだ。Saturn(土星)のリングは一本の輪じゃないんだよ。ゴミのようなものが集まってできてるんだよ。ところでJupiterとSaturnって日本語でなんていうの?」と家に帰ってくると私に習ったことを教えてくれました。また、「人間の身体は何でできているの?」といった質問も。「水分やたんぱく質やいろいろ。」と答えると、「いろいろって何?」と来るので大人もタジタジになってしまいます。
「僕は大きくなったらJupiterまで行くんだ。」と胸を張って語る子どもを見ていると、私ももう一度子どもからやり直せたらなとしみじみするのでした。
(林 秀代 2007年9月記)
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