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第7回 日本への想いと手紙


 誕生日が終わってしばらくした頃、子どもが突然「日本へ帰りたい」と言い出しました。

 何か幼稚園であったのか聞きましたが、特に事件があったわけではなく、自分の伝えたいことがうまく伝えられないのでストレスを感じているようでした。生活で必要なことは少しずつ言えるようになってきましたが、自分の意見や主張を言うことはとてもできません。私自身中国語で同じ経験をしていたので、「少し話せる」ときってストレスを感じるだろうと同情もしました。

 子どもには、言葉はすぐに話せるようになるものではないこと、でも毎日毎日食事を取っているおかげで、赤ちゃんの時と比べるとうんとからだが大きくなっているように、言葉も毎日話すことで少しずつ上達すると言いました。

 クラスには日本人のクラスメートもいましたが、クラスメートに自分の言いたいことを伝えてもらうのもだんだん面倒だったり、恥ずかしく思うようでした。

 しかし、世の中はうまくまわるものです。

 偶然その時期にとあるチケットを友人が買ったので、帰国して見に来ないかという誘いを受けました。更に日本の自宅についても心配な事があり、中国は日本から近いという気分的なお手軽さから、1週間だけ子どもと二人で帰国することにしました。


 日本ではまず保育園へ遊びに行ってみました。子どもは少し照れくさいながらもとても嬉しそうでした。予想どおりお友達から挨拶のように言われたのが、「中国語しゃべって」。子どもは「ニーハオ」の後、「中国語よりも英語の方がよくわかる」と言いました。お友達はどうして中国にいるのに英語を話すのかよくわからない様子でした。

 「○○って中国語で何て言うの?」と言われると、「幼稚園では英語だから英語だったらわかるけど、中国語はまだわからない。」と子どもは説明していました。

 相手は子どもですから中国に行けば中国語が話せると思っています。子どもは日本で改めて、外国に住んでいる自分の立場に気付いたようです。そして自分の中で、普段はまだそれほど自信がない英語の方が中国語よりもよくわかるような「英語に対するハードル」が少し下がったようでした。

 そんな挨拶代わりのやりとりは一瞬のことで、お友達と遊んだのは子どもにとって良い気分転換になりました。「次回帰国したらまた遊ぼう」と約束して別れました。


 北京へ戻ると、子どもは空き箱で郵便ボックスをつくって郵便ごっこを始めました。「この箱にお手紙入れてくださーい。」と言うのです。私が「きょうのごはんはなにがいい?」と書いて箱に入れると、「ピザ」という返事を届けてくれたり、私が「きょうはなにしてあそんだ?」と書くと、「じてんしゃ6しゅう」という返事が来ました。

 すると突然、子どもは「日本の保育園のお友達にお手紙を書くんだ!」と言い始めました。

 ひらがな表とカタカナ表を取り出してきて、一字一字確認しながら、「今度帰ったらまた一緒に遊ぼう」といった文章や絵を書きました。字はなんとかかけますが、左右にひっくり返っていたり、少し間違っているのもあります。私は間違っていてもあまり注意せずに、好きなように書かせました。しつこく注意すると書く勢いがなくなると思ったからです。正しい書き方はいずれわかるので、長い目で見ようと努めました。

 日本のお友達も返事を書いて手紙を送ってくれました。初めて見る中国の切手の付いた手紙にとても感動していたそうです。息子も何通も何通も手紙を書いては切手を張ってポストへ投函しました。

 親としては日本語ももちろん大切です。日本語を書くきっかけができてよかったと思いました。


 英語の方は北京の幼稚園の先生から一つ宿題をもらっていました。子ども達が帰国する度に、自分の国から幼稚園へカードを送ってもらっているので、何でもいいので一筆書いて、カードを幼稚園へ送ってほしいというものでした。

 子どもは絵葉書に英語で少しだけ何か書き、郵便局へ持って行きました。到着するのに2週間もかかりヤキモキしましたが、無事到着してクラスの子どもたちの前で披露されたようでした。それも子どもにとっては嬉しかったことなのでしょうね。

 何気に決めた一時帰国でしたが、大きな収穫を得たようです。案外英語をわかっているという自信や、日本語を書くこと。自分の書いたものが海を越えて友達のもとへ届けられる楽しみ。「嬉しい」とか「楽しい」という気持ちが大きく行動を動かすきっかけになることがよくわかりました。

 次回は幼稚園での通知表。それは・・・?

(林 秀代 2007年7月記)

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